海外に暮らす女性が宝石を身につける意味
先代のジニー社長と言えば、大きな宝石をイメージされる方も少なくないと思います。いつも指にはキラキラを大きなダイヤが輝いていました。
不動産業に入る前は、ユダヤ人の元で宝石の販売をしていたジニー社長。さすが宝石を見極める力は天下一品でした。ダイヤ、ルビー、サファイヤ、エメラルド、翡翠・・・指にはいつも大きな石がキラキラと光を放っていました。そして、いつも「てるよさん、これが本物のルビーよ。深い紅い色にそして、ちょっと鉱石が混じっているのよ。よく見てご覧なさい」と言い、いつも指輪を外して、私の手のひらにポンと置いて、見せてくれていました。
どんな石も、素人の私には、本物なのか、偽物なのか全然わかりませんでした。しかもそんなに大きな石の値段や価値など、想像もつきませんでした。ただ私の手の平でずっしりと重い石と、それを支える頑丈なプラチナの指輪の土台の重厚感に圧倒されたのだけは覚えています。
ジニー社長は、自慢で私に宝石を見せていたわけではありません。本物を見せて教えてくれていたのです。「小さい石なんか指にはめたって意味がないわよ!」とおっしゃるので、恥ずかしくなって、こっそり私の指輪を隠したこともあります。
ジニー社長が私に教えたかったことは、本物を持つこと、価値のあるものを持つこと、そして、それは資産だということでした。そして大きなダイヤの指輪をそっと外して、「女性が海外で生活するということは大変なのよ。何があるかわからないし、ある日、一銭もなくなって丸裸になってしまうかもしれない。そんな時はね、これが現金になるのよ。命がこれで助かるかもしれないのよ」と豪華な指輪の裏に、真剣に生きる女性の凛とした姿をみました。
またある日は、大きな翡翠の指輪を見せてくれたことがありました。翡翠は他の石以上に、本物か偽物なのかさっぱり私にはわかりません。ジニー社長はまたそっとその指輪を外して、私の手の平にポンと乗せ「翡翠にはね、魔よけの効果があるのよ。これは不動産のセールスで初めて入ったコミッションで買った特別なものよ」と当時を懐かしむかのような表情でお話くださいました。
そして続けて、「宝石はね、人にあげたいとき、手のひらでポンと渡せれるでしょ。これがお札だったら大変よ。大きくなってしまって重いし。」まさに、宝石は流動資産ということを教えてくださいました。価値のあるものを持つことは、ジニー社長にとって生きるための保険のようなものだったのです。決して見せびらかしたり、自慢げに宝石を身に付けていたわけではなかったのです。
先日お話してくださった女性経営者I様も、同様のお話をしてくださったことがありました。「母親にピアスを開けなさい、そして価値のあるピアスをつけなさい、って言われてきたの。何かあった時にお金になるでしょ」とそっと髪をかき上げて、ピアスを見せてくださいました。
続けて「母に、指輪では駄目って言われたのよ、指を切られたら取られちゃうでしょ、だから、耳に穴をあけるのが一番なのよ」と。恐ろしい言葉にドキッとしましたが、ジニー社長と考え方が同じで、日本人女性は、本当に覚悟をして真剣に生きてきていると、改めて強く感じました。
私には、まだまだ高価な宝石を身に付けるレベルではありませんが、日本へ帰る片道航空券を買えるだけのものは付けています。それが、私にとってまさに生きていく上での保険なのです。
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